毎日健康日記

生きるの下手くそです

異質な恋愛小説

中学生の時、自分の違和感に気づいた。

 

とある女は振り向いて「35億」と言うが、自分の対象は35億どころではない。

 

全人間対応している。

 

しかし世間は基本的にそんなサービスを許さないしむしろ軽蔑されてしまう。

 

 

でもそんな事別にどうでもよかった。

むしろ「その人が好きなんだから性別はどうでも良いだろ」っていうポジティブシンキングだった。

 

 

 

 

 

ある日授業でジェンダーの授業があった。

担任は「話し合ってください」と言い、教室は一気に騒ついた。もちろん発狂する奴もいた。

 

自分は話し合いほどめんどくさいものはないと思っていたが、内容が内容だったので聞く耳は持っておいた。

 

前にいる女子2人組が話し始めたが、その時に出た言葉が3年も自分を縛り付けることになるとは思わなかった。

 

 

 

 

「見る分には良いけど対象にされるのはキモいよね」

 

 

その言葉を聞いて「こんな奴いるのかよ」と思った自分は改めて自分はイカれなんだ、と痛感した。

 

しかし当時はとんでもクソガキだった為、

「お前らなんかこっちから取り下げだわ、クソ」

と、千枚刺しぐらい尖った思考をしていた。

 

 

月日は経ちイカれたメンバーとも離れ、自分は高校生になった。

 

高校では友達を作る気がなかった。

最初から「出来るわけねえだろ」と諦めていた。

 

 

 

とある授業中、先生の話を聞き流しながらパソコンをカチャカチャしていた時、隣の席に居た子が話しかけてきた。

 

その時は出席番号順で、彼女は自分の次の番号だった。

会話は全く覚えてないが、好きな漫画が一致してめちゃくちゃ盛り上がった記憶がある。

 

 

 

次の週、同じ授業でまた脳死パソコンカチャカチャをかましていた所、また彼女は話しかけてきた。

 

「こないだ言ってた好きなキャラがガチャガチャで出たからあげる」

 

 

ドキッとした。

 

 

こんなどうでもいい人間のどうでもいい情報を覚えてくれる人が居るんだと思った。

 

 

そこから自分は彼女とめちゃくちゃ仲良くなった。

 

 

 

 

 

1年も終盤で「留年するよ」と担任に言われていた頃、コロナウイルスが日本に上陸し高校は休みになった。

 

 

そうして暇すぎる時間を過ごし、

学校が始まる1ヶ月ほど前、家に新しいクラスの名簿が届いた。

 

ほとんど誰が誰だかわからない中、自分の下に書いてある彼女の名前を見つけた。

自分は急いで彼女に「同じクラスだね」と送った。

 

すると彼女から「やったね‼️イエーイ」的な返事が返ってきた。

そこで盛り上がったものの、分散登校で数ヶ月間は彼女と会うことはなかった。

 

その頃にはもう彼女に会えない時間が苦痛になっていた。

 

 

 

分散登校も終わり、彼女とも再会しクラスも馴染んでグループがそれぞれ出来た頃

自分がなんとなく所属していたグループで某ディズニーランドへ行く事になった。

 

 

 

 

 

当日、自分は大ねぼすけをかまして遅れていくと先に着いていた友達が手招きをする。

 

その中にはもちろん彼女もいた。

 

彼女と自分は真逆の人間だったが、本能で動くのは共通していたので案の定他の友達とはぐれてしまった。

 

 

彼女と2人きり、手を繋ぎながら作られた世界を歩いた。

 

 

 

 

その時間がなんだか幸せで、ずっと2人きりで良いのにな。と思った

 

 

 

 

 

 

 

2年も後期になり、自分は精神がバグりまともに学校に来なくなっていた。

しかし彼女は毎朝「今日は何時に来るの?」とLINEを送ってきた。

 

なので彼女に会うために高校に行った。

しかし行ったところで爆睡をかますだけなので彼女と対面で話すことはなかった。

 

 

 

 

 

その時にはもう完全に彼女の事が好きだった。

 

 

 

 

 

2年後半は人と会話をせず一日中寝ていたため、彼女とほとんど話す事はなかった。

 

なので特に思い出もなくぬるっと3年になっていた。

 

 

 

 

 

相変わらず彼女は後ろの席でまじめに授業を受けていた。

自分はそれをずっと眺めていた。

 

 

 

良い感じのエモ文章に見えるが、シンプルに授業態度がカスなのは置いといて、またみんなでディズニーに行こうという話になった。

 

しかし自分は休日がほぼないため、辞退させてもらった。

もちろん彼女からLINEが来た。

 

 

 

「一緒に行きたい」

 

 

 

はぁ〜〜〜とクソデカ溜息をつくと、「ごめんね、次は一緒に行こう」とLINEを送った。

 

 

約束を果たせないまま前期も終わり大学受験が近づく中、自分は高校を休むことが増えた。

 

自宅で延々と楽器を演奏するか、未成年という言葉の意味を知らないのでベランダでタバコを吸っていた。

 

そうしてまた会えない日々が続いた。

 

 

 

その時にはもう完全に彼女の事が好きだった。

 

 

 

正直一年の後半から薄々自分の思いに気づいていた。

 

しかし中学の言葉が永遠に自分の首を締め上げた。

 

 

今は受け入れられてると言うが、世間の目はそう甘くない。

自分がなんと言われようと何も思わない

ただ自分のせいで彼女が犠牲になるのが怖かった。

だから自分はこの気持ちを殺す事にした。

 

 

 

 

 

 

 

受験も終わり、卒業までのカウントダウンが教室で始まる。

 

彼女と他2人で大阪へ旅行に行く事になった自分は、いそいそと準備をしていた。正直緊張した。

 

 

 

東京駅で彼女達と会い、新幹線で彼女とスマブラで延々とK.Oされてると大阪に着いた。

 

難波を歩きご飯を食べ、ホテルでちょっと騒いで次の日に備えて寝た。

 

 

 

誰かのアラームで目が覚める。

朝起きて寝起きでピアスを開けるというキモムーヴをかまし、待ちに待ったUSJへと向かった。

 

グッズを買い、何個かアトラクションも乗り楽しさが絶頂になった時、案の定本能で動きすぎて彼女と2人きりになっていた。

 

 

あの時と同じように彼女と手を繋いで歩いていた。

 

 

彼女は笑いながら

「私たち付き合ってるみたいだね」

と言った。

 

 

 

その言葉が自分の心を刺した。

その痛みに耐えながら「そうだね」と返した。

 

それ以降あまり記憶がなかった。

 

 

 

いつまでもその言葉が脳みそに住み着いた。

帰りの新幹線で空虚を見つめながら考えた。

 

本当に付き合えてたらどれだけ良かったことか。

 

数ヶ月後にはみんなそれぞれの道を行く。

それまでに彼女に告白しよう、とは思わなかった。

 

 

彼女を諦めよう、と思った。

 

 

今までの幸せな時間もこの記憶も全て無かった事にしよう。

彼女が好きだからこそ、諦めるべきだと思った。

 

 

 

 

 

 

時間はあっという間に経ち、卒業式の日になった。

少し目を瞑って開けると卒業式は終わっていて、自分達は教室に戻った。

担任は最後のHRを終わらせて、みんながアルバムに一言一言書きあっていた。

 

 

 

自分は彼女の卒業アルバムには何も書けなかった。

 

 

 

ぼちぼちとみんな帰っていき、また彼女と2人きりになった。

 

 

「帰ろうか」

 

 

そう言って2人で学校を出る。

3年間一緒に歩いた道を見つめながら彼女の手を握る。

 

もちろん彼女も握り返す。

 

 

 

「また2人きりだね」

 

 

 

彼女は笑いながら言った。

 

 

 

「そうだね」

 

 

 

いつもと同じ返事をした。

 

 

 

「結局私たちって2人になっちゃうね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私たち付き合ってたのかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この言葉が自分の心にトドメを刺した。

 

3年間想い続けた人と明日からは離れなければならない。

彼女の為に諦めようと思ったが、3年間の長い月日を経て拗らせ続けたこの思いが簡単に終わるわけがなかった。

 

 

 

 

 

 

「ほんとに付き合えてたらよかったのにね」

 

 

 

 

 

 

彼女には聞こえないくらいの小さな声で呟いた。

 

そして何事もなかったかのように笑いながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

「そうかもね」